高配当のETFは、株価の下落局面でも配当収入を得られるため、一時的に資産が減ったとしても、心理的に長期保有を続けやすいです。また、生活費や老後資金の補填をしながら資産運用したい方にも相性がいいでしょう。米国株は高配当ETFが充実しており、豊富な選択肢の中から自分に合ったものを選べます。
本記事では、米国株の高配当ETFを選ぶ際のポイントやおすすめの銘柄、投資する際の注意点を解説します。自分にぴったりな米国株の高配当ETFを選びたい方は、最後までお読みください。
米国株の高配当ETFを選ぶ際のポイント
長期的に安定した配当を得ながら資産形成をするには、配当利回りだけでなく、さまざまな観点から総合的に判断する必要があります。
ここでは、後悔しないETF選びのために、最低限おさえておきたい以下4つのポイントを解説します。
- 配当利回りだけでなく過去の値上がり率も確認する
- できるだけ信託報酬の低いETFを選ぶ
- 純資産総額が大きく流動性が高いETFを選ぶ
- 構成銘柄のセクターが分散されているか確認する
配当利回りだけでなく過去の値上がり率も確認する
配当利回りの高さだけでETFを選ぶのは危険な判断だといえます。高い配当金を受け取れても、ETFの価格が下落してしまうと、資産全体でのリターンはマイナスになることもあるからです。
そのため、過去3年〜5年の値上がり率も確認して、総合的に将来のリターンを予測する必要があります。
競争力の高い企業が多いので、米国株が長期的に価格が下落するリスクは低いと言えます。しかし、安定した資産形成を狙うためにも、過去の値上がり率は確認しましょう。
できるだけ信託報酬の低いETFを選ぶ
信託報酬とは、ETFや投資信託を運用するファンドに対して、投資家が支払う年間の運用手数料のことです。
信託報酬は保有期間中、継続的に差し引かれるため、長期投資では大きな差となって現れます。
とはいえ、人気の米国高配当ETFの信託報酬は、以下のとおり低水準です。長期投資でもコスト面での懸念は少ないでしょう。
- VYM(0.06%)
- SCHD(0.06%)
- SPYD(0.07%)
- HDV(0.08%)
上記のETFは後ほど紹介しますので、銘柄選びの際に確認してください。
純資産総額が大きく流動性が高いETFを選ぶ
純資産総額はETFの規模の大きさを示す指標です。
一般的に、純資産総額が大きいETFは信託報酬が低く流動性が高い傾向があり、安心して取引できます。
また、純資産総額が大きいETFは運用が終了になるリスクが低いため、長期保有がしやすいのも利点です。
ETFの規模や人気度、運用安定性を測る指標として、銘柄選びの際に参考にしましょう。
構成銘柄のセクターが分散されているか確認する
特定のセクターに偏ったETFは、景気変動の影響を受けやすい傾向があります。
セクターとは、金融や情報技術、ヘルスケア、生活必需品といった業種の分類のことです。特定のセクターに投資が集中しているETFは、その業界の景気動向に運用成績が大きく左右されてしまいます。
バランスの良いセクター分散により、一つの業界が不調でも他の業界がカバーできるため、安定したリターンが期待できます。
投資する前に主要セクターの割合を確認し、過度な集中投資になっていないかチェックすることが大切です。
おすすめの米国株の高配当ETF4選
米国の高配当ETFを選ぶ際のポイントについて解説しましたが、自分に合った商品を探すのは大変かもしれません。
ここでは、人気と実績があり、それぞれ異なる魅力を持つ4つのETFを紹介します。
SPDR®ポートフォリオ S&P500®高配当株式ETF(SPYD)
配当利回り | 約4.47% |
信託報酬 | 0.07% |
過去5年の値上がり率 | 約62.31% |
セクター比率 | 不動産(22.43%) 生活必需品(16.67%) 金融(15.5%) 公益事業(12.86%) ヘルスケア(7.96%) エネルギー(6.56%) 素材(6.51%) 消費財(3.94%) コミュニケーションサービス(3.82%) 資本財(2.34%) 情報技術(1.4%) |
データソース | ブルームバーグ State Street (セクター比率) |
※2025年9月時点
SPYDは、高い配当利回りを求める投資家にとって、特に魅力的な選択肢と言えます。2025年9月時点で予想配当利回りが約4.47%あり、今回紹介するETFの中で最も高いからです。
SPYDの構成銘柄は、S&P500の中から、配当利回りが高い上位80銘柄です。そのため、他の高配当ETFと比較しても、配当利回りが高水準になる傾向があります。その結果、定期的なインカムゲインを重視する投資家から人気を集めています。
ただし、構成銘柄のセクターは不動産や金融など、景気の動向に敏感な業種の割合が高いです。投資する際は、景気動向によっては価格変動が大きくなりやすいことに注意しましょう。
シュワブ米国配当株式ETF(SCHD)
配当利回り | 約3.84% |
信託報酬 | 0.06% |
過去5年の値上がり率 | 約50.14% |
セクター比率 | エネルギー(19.23%) 生活必需品(18.81%) ヘルスケア(15.53%) 資本財(12.50%) 情報技術(9.00%) 金融(8.91%) 消費財(8.38%) コミュニケーションサービス(4.52%) 素材(3.07%) |
データソース | ブルームバーグ Asset Management (セクター比率) |
※2025年9月時点
SCHDは財務が健全で、10年以上にわたって連続で配当を支払ってきた実績のある、質の高い約100銘柄で構成されています。
2025年9月時点の配当利回りは約3.84%と高く、長期的に安定した配当を得たい方に相性がいいでしょう。
また、構成銘柄のセクター比率は適度に分散されており、価格変動が小さく抑えられています。株価の変動を気にせず安心して長期保有したい方にもおすすめです。
バンガード・米国高配当株式ETF(VYM)
配当利回り | 約2.40% |
信託報酬 | 0.06% |
過去5年の値上がり率 | 約76.27% |
セクター比率 | 金融(21.84%) 情報技術(15.59%) ヘルスケア(12.53%) 生活必需品(11.62%) 資本財(11.2%) エネルギー(8.71%) 消費財(7.73%) 公益事業(5.84%) コミュニケーションサービス(2.86%) 素材(2.05%) |
データソース | ブルームバーグ Yahoo!finance (セクター比率) |
※2025年9月時点
VYMは分散投資を重視し、リスクを抑えながら安定した配当収入を得たい投資家におすすめのETFと言えます。
配当利回りが低い傾向にある情報技術セクターが多く含まれていたり、500銘柄以上で構成されていたりするなど、圧倒的な分散性を誇っているからです。
成長性の高い情報技術セクターが多く含まれているからか、過去5年の値上がり率は約76.27%と高いです。配当利回りだけでなく、価格の上昇もある程度狙いたい方と相性がいいでしょう。
iシェアーズ・コア高配当株ETF(HDV)
配当利回り | 約3.12% |
信託報酬 | 0.08% |
過去5年の値上がり率 | 約53.2% |
セクター比率 | 生活必需品(25.07%) エネルギー(22.11%) ヘルスケア(19.77%) 公益事業(9.04%) 消費財(6.41%) 情報技術(5.66%) コミュニケーションサービス(3.85%) 金融(3.66%) 資本財(3.01%) 素材(1.04%) |
データソース | ブルームバーグ BlackRock (セクター比率) |
※2025年9月時点
HDVはディフェンシブな投資戦略を目指したい、安定志向の投資家向けETFです。
セクター比率は、景気の影響を受けにくい生活必需品やヘルスケア、エネルギーなどが高いです。これらのセクターは、不景気で株価が下落する局面で強さを発揮します。
ただし、組入れ上位10銘柄だけでETF全体の50%以上を占めるため、組入れ上位の銘柄が不調に陥ると、価格が大きく下落するリスクがあります。
とはいえ、消費者の生活に欠かせない事業を行っている銘柄ばかりなので、業績が低迷する可能性は低いでしょう。
高い配当利回りを狙いつつも、相場全体の暴落に対する備えをしたいと考える方にとって、HDVはぴったりです。
米国株の高配当ETFに投資する際の注意点
米国の高配当ETFは魅力的な投資商品である一方で、国内投資とは異なるリスクがあります。
投資を始めてから後悔しないためにも、米国株の高配当ETFに投資する際の注意点をおさえておきましょう。
為替変動リスクがある
米国株ETFは米ドル建ての金融商品なので、ETFの価格変動だけでなく、ドル円のレートの変動でも資産が増減します。
例えば、1ドルが150円から140円になる「円高」が進んだ場合、ドル建てのETFの価値は日本円に直すと目減りしてしまう、ということです。
とはいえ、ドル建てで米国株ETFを購入したときよりも円安が進めば、ドル建てのETFの価値は、円換算した際に増えます。
このように聞くと、円高のときに米国株の高配当ETFを買いたくなると思いますが、為替の変動を予測することは難しいです。
円安時に多く投資して為替で損をしないようにするために、購入時期を分散して米国株の高配当ETFを購入するのがおすすめです。
米国株の配当金は二重課税される
米国株の配当金には、米国と日本の両方で税金がかかる「二重課税」という仕組みがあります。
米国では源泉徴収税として通常10%が差し引かれ、日本でも20.315%の税金が課されます。米国株の配当金は二重課税されることで、合計約28%の税負担が発生するのです。
とはいえ、NISA口座で米国株の高配当ETFへ投資すれば、国内の税負担は免除され、負担するのは米国での10%のみになります。
また、NISA口座の枠が空いてなくて一般口座で投資した場合でも、確定申告で「外国税額控除」という手続きを行うことで、米国側の税金負担を軽くできます。
ただし、外国税額控除はNISA口座で投資した場合は利用できません。国内の課税口座でのみ利用できる制度であることを覚えておきましょう。
配当金が自動で再投資されない
多くの米国ETFの配当金を現金として受け取る形式です。そのため、複利で効率的に資産形成をするためには、自分で配当金を再投資しなければなりません。
配当金を自分で再投資するのは、手間がかかるだけでなく、売買手数料がかかるのも難点です。
投資信託であれば、基本的に配当金を自動で同じ商品に再投資する形式です。売買手数料がかからず、複利の効果を活かした効率的な資産形成を目指せます。
とはいえ、受け取った配当金を生活費の足しにするなど、再投資以外で利用するつもりであれば、気にする必要はないでしょう。
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